FIFTHWORLD
SUMMER JOURNEY 2010

STORY

『LOST CRESTS』第四楽章(前編)
〜発見 #1〜


紋章を探し回った巫女たちは、奉納の間からさほど遠くないながらも、長いこと使われていない小屋を遠くに見つけた。

その世界の民衆も近づくことのない地域にある小屋の周りは、陽が暮れた静寂と闇をさらに黒く染める、暗黒に包まれていた。そしてこの周辺から少し離れた場所には、今彼女たちの世界でピピの紋章を待つ民衆たちとは生活を違える、黒いドレスに身をまとう人々が暮らす世界がある、というのを巫女たちは以前から聞かされていた。

だが、さほど遠くない2つの世界でありながらも、それぞれの民衆たちが交わるということはなかった。

紋章を探す巫女たちの耳に、普段聴きなれない音楽が遠くから聴こえてくる。その音楽をかなで、歌う音には、創造力に溢れながらも真摯で狂気に満ちた印象が聴いて取れた。

「この音楽と世界観の違いが私たちの世界との間に見えない境界線を産んでいるのかもしれないね・・・」

巫女の一人ウーパが、ふとそんなことをひとりごとのようにつぶやいた。

このあたりの明らかな空気の違いは、創造から生まれる混沌がもたらしている。
けれど、どこかで懐かしい感覚も彼女たちは覚えていた。

少しずつ近づく小屋にほのかな明かりが灯っている。
扉もない、布きれ一枚で仕切られた入り口のある小屋へ、ミーニャ、エレーナ、ウーパの3人の巫女たちは恐る恐る足を近づける。

「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」

エレーナが少し怯えた感じで尋ねると、中からさみしげで震えるような声で「来ないで・・・」と返事が返ってきた。

ピピの紋章を探す巫女たちはお互いを見合わせたが、彼女たちの世界の方にふと目を向けると、普段は柔らかな空に輝く星たちが、すっぽりと暗闇でも分かる真っ黒な大きな雲で隠され、その奥でここまで聞こえてくる雷鳴と風の音が支配している。

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